2013年3月20日水曜日

日本糖尿病学会は糖質OFFな生活をオススメしません

やっぱり「よくわかりません」ってことです。


3/18に一般社団法人日本糖尿病学会に設置された食事療法に関する委員会が日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言 ~糖尿病における食事療法の現状と課題~を公表されました。

この提言は糖尿病治療の観点から、糖質制限に効果があるか、悪い影響がないかと言うことをこれまでに発表された論文を分析するとともに学会内外から意見を集約して作成したものです。提言の内容を引用すると「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない。」としており、糖質OFFな生活は推奨できない、すべきで無いとしています。

様々なニュースで取り上げられている(こことかこことかこことかこことか)ので、それらを読んで頂ければ、大凡の内容はわかりますが、私なりにも提言の内容について興味を持ったところなどを取り上げて感想・コメントを書いておきたいと思います。




まず、提言の本文はこちらで読むことが出来ます。どんなものにも共通することですが、二次情報で無く、原典を読んでみるのが良いと思います(ニュース記事とかは結構、誤解して書いていることがありますし)。

まず、この提言では「2型糖尿病」を対象にしています。「2型糖尿病」とは、Wikipediaによると日本人の糖尿病の9割がこれに該当し、生活習慣(と遺伝的要因)が原因で発症するものとなっています。つまり、日本人の糖尿病患者が糖質制限で治療をしても良いのか?と言うことに現時点での答えを示しているものです。

したがって、糖尿病を発症していない健康な人については、そもそも対象になっていないことに留意が必要です。


提言の前半では、三大栄養素の摂取量について、実態や基準を引用し、炭水化物については50~70%程度が望ましいことと糖尿病治療でも50~60%程度になっており、これが健康な人の実態や基準と比較しても近く、社会的なコンセンサスも得やすいので妥当な比率としています。

後半では、糖質制限による治療について論文の分析をしており、多くの論文においてデータが不十分であるため効果・安全性について判断出来るエビデンスが蓄積されていないとしています。

そして提言では、冒頭で引用したように「現時点では薦められない」とまとめています。一方で、「先に述べたように、体重を効果的に減量させるための一つの手段として炭水化物摂取量について論議がなされている。しかし、欧米の研究においては対象となる BMI は 30~35 以上のことが多く、肥満度の異なる日本人の糖尿病の病態に立脚した適正な炭水化物摂取量については、いまだ十分なエビデンスが揃っているとは言えない。社会的なコンセンサスを得る上においても、今後日本糖尿病学会として積極的に調査・研究の対象とすべき課題である。」としており、糖質制限の効果・影響については、今後日本糖尿病学会でも積極的に調査・研究をする対象にすることも提言しています。

このことは、「現時点では薦められない」が、エビデンスが蓄積され、糖質制限の効果・影響がある程度わかってくれば、その時点でもう一度判断をすると言うことだと思います。もちろん、その時点でも薦められないという結論になる可能性は高いですが、一部の糖尿病治療にあたっている医者は糖質制限を推奨していますので、一定の条件ややり方次第では効果があるという結論もありそうだと思います。


前の「糖質OFFな生活を続けても安全か」で書いたとおり、どのような論文・提言がでても、私としては体重を大きく減らせた糖質OFFな生活を当面は止めるつもりはありません。ただ、このように様々な分析からその効果・影響について評価が実施されることは、社会的な認知度を上げていくために重要だと思います。引き続き、糖質制限の効果・影響についてはウォッチしていきます。